不動産売却で申し込みが複数!「もっと高く売れる?」と欲を出す前に知るべきリスクと正しい対処法
ご所有不動産の売却活動を開始し、複数の購入希望者から申し込みが入った。売主様にとって、これほど嬉しいことはないでしょう。
「自分の物件にはそれだけの価値があったんだ」と安堵するお気持ち、そして「もしかしたら、もっと高く売れるチャンスなのでは?」と期待に胸が膨らむお気持ち、どちらも非常によく分かります。
特に、売り出しから間もないタイミングで、しかも満額での申し込みが2件も重なる(バッティングする)と、「設定価格が安すぎたのかもしれない…」と、少し複雑な心境になることもあるかもしれません。
そして、その期待感から「2組に競ってもらって、少しでも高い金額を提示してくれた方に売りたい」と考えるのは、売主様としてごく自然な感情です。
しかし、この「買い上げ交渉」という選択、実は大きなリスクを伴うことをご存知でしょうか。
目先の利益を追い求めた結果、かえって売却の機会そのものを逃し、最終的に損をしてしまうケースは、残念ながら少なくありません。この記事では、不動産売却の実務を熟知したプロの視点から、複数の申し込みがあった際の安易な「買い上げ交渉」に潜む危険性と、後悔しないための正しい対処法を具体的に解説していきます。
なぜ「買い上げ交渉」を考えたくなるのか?売主様の心理
複数の申し込みが入ると「買い上げ交渉」を検討したくなるのは当然です。その背景には、売主様が抱える自然な心理があります。
「もしかして、売出価格が安すぎた…?」という不安
不動産会社が提示する査定価格は、あくまで「これくらいの価格で売れる可能性が高い」という予測値です。
そのため、売主様は「本当にこの価格で売れるのだろうか」という不安と、「できることなら、もう少し高く売りたい」という期待の両方を抱えながら売却活動をスタートします。
そんな中で、予想以上に早く、しかも複数の満額申し込みが入ると、「査定価格が市場の実勢よりも安かったのではないか?」という疑念が生まれるのは当然のことです。特に、時間をかけて売れると覚悟していた方ほど、その傾向は強くなります。
「需要があるなら、もっと高値を目指せるはず」という期待
複数の申し込みは、その物件に対する市場の需要が高いことの証明に他なりません。
需要と供給のバランスで価格が決まるのが市場の原理原則ですから、「これだけ欲しい人がいるのなら、競争原理を働かせて、より高い価格で売却できるのではないか」と考えるのは、合理的な思考とも言えます。
売却によって得られる資金は、次の住まいへの資金や老後の生活費など、今後のライフプランに直結する大切なものです。だからこそ、1円でも高く売りたいと願うのは、全ての売主様に共通する想いなのです。
ちょっと待って!安易な「買い上げ交渉」に潜む2大リスク
しかし、その自然な感情のままに買い上げ交渉を進めてしまうと、思わぬ落とし穴にはまる可能性があります。ここでは、実務上よく見られる2つの大きなリスクについて解説します。
リスク1:2件とも白紙に?購入希望者の「不信感」というワナ
最も恐れるべきリスクは、2件の申し込みが両方とも流れてしまうことです。買い上げ交渉は、いわば「後出しじゃんけん」を認めるオークションのようなもの。売主様と不動産会社が主導し、購入希望者AさんとBさんに、さらなる高値での条件提示を促すことになります。
ここで重要なのは、AさんとBさんはお互いの顔も素性も見えないということです。不動産会社から「別の方が、今の金額より高い〇〇万円で購入したいと言っていますが、どうしますか?」と伝えられるだけです。この状況で購入希望者はどう感じるでしょうか。
- 「本当にそんな相手がいるのだろうか…?」
- 「もしかして、売主と不動産会社がグルになって、価格を吊り上げようとしているだけじゃないか?」
- 「なんだか足元を見られているようで、気分が悪い」
このように、相手の存在が不透明な状況での価格競争は、購入希望者に強い不信感や不快感を与えます。最初は「絶対にこの物件が欲しい!」と熱意を持っていたとしても、次第に冷静になり、「こんな不誠実な売主から買いたくない」「縁がなかったのだろう」と、購入意欲そのものが急速に冷めてしまうのです。
その結果、AさんもBさんも交渉から降りてしまい、売れるはずだった2件のチャンスを両方とも失ってしまうという最悪の事態を招きかねません。
リスク2:再募集で苦戦…「売れ残り物件」の烙印
一度得たチャンスを逃し、再度販売活動を行うことになった場合、以前と同じように好条件の申し込みがすぐに入るとは限りません。むしろ、状況は不利になることの方が多いのです。
不動産市場では、一度販売サイトに掲載されてから申し込みが入り、その後再び掲載される物件は、「何か問題があって契約が流れたのではないか?」「一度売れ残った物件だ」というネガティブな印象を持たれがちです。他の購入検討者もその経緯を見ていますから、「一度は申し込みがあったのに、なぜまた売りに出ているんだろう」と勘繰られてしまいます。
そうなると、以前のような勢いはなくなり、内見の数も減少。結果的に、当初の売出価格から値下げをしないと売れないという状況に追い込まれることも珍しくありません。買い上げ交渉で得られるかもしれなかった数十万円のために、数百万円の値下げを余儀なくされるのでは、本末転倒です。
複数の申し込みが入った時の正しい対処法【3ステップ】
では、買い上げ交渉というリスクの高い選択を避け、複数の申し込みという絶好の機会を最大限に活かすには、どうすればよいのでしょうか。
プロが推奨する正しい対処法を3つのステップでご紹介します。
ステップ1:条件の比較検討(価格だけじゃない!重要チェックポイント)
まず、焦って一人に決めてしまうのではなく、それぞれの申し込み内容を冷静に比較検討することが重要です。チェックすべきは価格だけではありません。以下のポイントを総合的に評価しましょう。
- 購入価格:満額か、指値(値引き交渉)か。
- 手付金の額:手付金の額は、購入希望者の本気度を測る一つの指標になります。一般的に、額が多い方が契約解除のリスクは低いとされます。
- 住宅ローンの事前審査:すでに事前審査で「承認」を得ている方と、これから審査を受ける方とでは、契約の確実性が大きく異なります。承認済みの方が圧倒的に有利です。
- 契約・引渡しの希望時期:売主様の希望スケジュールと合致しているか。スムーズな住み替えには非常に重要な要素です。
- その他の条件:例えば、「契約不適合責任(旧:瑕疵担保責任)」の免責を希望しているかなど、細かな条件も確認します。
ステップ2:優先順位の決定と「2番手」への配慮
ステップ1で総合的に比較し、最も条件の良い購入希望者を「1番手」として、契約に向けた交渉を進める相手を決定します。この際、残念ながら選ばれなかった「2番手」の方への配慮が非常に重要です。
「申し訳ありませんが、僅差で他の方と話を進めることになりました。もし、その方との契約が成立しなかった場合には、改めてお声がけさせていただいてもよろしいでしょうか?」
このように、誠意をもって丁重にお断りし、「次点」としての関係性を維持しておくのです。万が一、1番手の方との契約がローン特約などで白紙になった場合でも、スムーズに2番手の方と交渉を再開できます。これにより、再募集のリスクを最小限に抑えることができるのです。
ステップ3:迅速な意思決定と契約手続き
交渉相手を決めたら、そこからはスピード感が命です。
購入希望者の気持ちは時間と共に変化します。長く待たせれば、他に良い物件を見つけて心変わりしてしまうかもしれません。
信頼できる不動産会社の担当者と密に連携を取り、売買契約の締結に向けて迅速に手続きを進めましょう。
まとめ|成功の鍵は、目先の利益に惑わされず、冷静な判断をサポートしてくれるパートナー選び
今回は、不動産売却で複数の申し込みがあった際の正しい対処法について解説しました。
複数の申し込みは、間違いなく売主様にとって大きなチャンスです。しかし、そのチャンスを目の前にして「もっと高く売れるかも」という欲が先行し、安易な買い上げ交渉に踏み切ってしまうと、かえって大きな損失を被るリスクがあることをご理解いただけたかと思います。
成功の鍵は、目先の金額だけでなく、手付金やローン審査状況といった総合的な条件を冷静に比較し、迅速に意思決定することです。そして、そのためには、売主様の利益を第一に考え、客観的で的確なアドバイスをくれる不動産パートナーの存在が不可欠です。
あなたの担当者は、買い上げ交渉のリスクをきちんと説明してくれますか?そして、売却という大きなゴールに向けて、あなたの状況や想いを丁寧にヒアリングし、仲介と買取の両方の選択肢を公平に提示しながら、最適な戦略を一緒に考えてくれるナビゲーターのような存在でしょうか。
お悩みなら、まずはMEISAの無料「売却ナビ診断」へご相談ください。私たちは、あなたの不動産売却における「二刀流ナビゲーター」として、最適なゴールまで誠心誠意サポートいたします。
本記事が、不動産売却をご検討中の皆様のお役に立てれば幸いです。
- MEISA 明紗は、千葉県流山市を拠点におく不動産会社です。
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売却に関する様々なご相談を承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。
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