不動産一括査定のからくり|その高すぎる査定額、信じて大丈夫?
「所有している不動産が、いくらで売れるんだろう?」不動産売却を考え始めた方が、まず最初に抱く疑問ではないでしょうか。そんな時、インターネットで手軽に複数の会社から査定がもらえる「不動産一括査定サイト」は非常に便利なツールに見えます。
しかし、いざ利用してみると「予想以上に高い査定額が出てきたけど、これって本当?」「たくさんの会社から一斉に電話がかかってきて疲弊してしまった…」といった経験をされた方も少なくありません。
実は、この手軽さの裏には、知っておくべき「からくり」が存在するのです。高すぎる査定額は、一見すると魅力的ですが、それを鵜呑みにしてしまうと、かえって売却活動が長期化し、最終的に損をしてしまう危険性もはらんでいます。
この記事では、不動産売却のプロであるMEISA(明紗)が、一括査定サイトで高値が提示されがちな理由、その背景にある不動産業界の事情、そしてAI査定の限界について、現場の視点から徹底的に解説します。
この記事を読めば、一括査定サイトの情報を正しく見極め、あなたにとって最適な売却戦略を描くための確かな知識が身につきます。大切な資産を納得のいく形で売却するために、まずはその仕組みを深く理解することから始めましょう。
なぜ一括査定の価格は高くなるのか?その「からくり」を徹底解説
一括査定サイトを利用すると、多くの不動産会社が地域の相場よりも高い査定額を提示してくる傾向があります。
なぜ、このようなことが起こるのでしょうか。そこには、不動産会社の営業戦略と査定システムの特性が深く関わっています。
からくり①:競争原理が「釣り価格」を生む仕組み
一括査定サイトの最も大きな特徴は、複数の不動産会社が同時に査定額を提示する点にあります。売主様からすれば、当然、最も高い金額を提示してくれた会社に興味を持つでしょう。不動産会社側もその心理を熟知しています。
彼らの最初の目標は、数ある競合の中から「売却の依頼(媒介契約)」を勝ち取ることです。そのため、まずは売主様の注意を引くために、意図的に相場よりも高い「釣り価格」を提示するケースが後を絶ちません。これは、まるでメールのフィッシング詐欺のように、魅力的な条件でユーザーを誘い込む手口と似ています。
実際に、私がご相談を受けたお客様の中にも、「一括査定で7,000万円と提示されたのに、契約後になって『市況が悪化した』など様々な理由をつけられ、最終的には5,000万円まで値下げを要求された」という方がいらっしゃいました。最初に高い金額で期待させておいて、後から価格を下げる。
これが、一括査定サイトでよく見られる典型的なパターンなのです。
からくり②:媒介契約を獲得するための営業戦略
不動産会社にとって、売主様との接点を持つことはビジネスの第一歩です。一括査定サイトは、その絶好の機会を提供してくれます。高い査定額を提示して売主様の興味を惹きつけ、まずは「会って話を聞く」というアポイントを取り付けようとします。
一度面談にこぎつければ、営業担当者は巧みな話術で媒介契約を迫ってきます。そして契約後に、「この物件には〇〇という欠点があるので、当初の査定額では難しいです」「近隣で似たような物件が安く売りに出されたので、価格を調整する必要があります」といった理由をつけて、徐々に販売価格を現実的なラインまで下げていくのです。この時点で売主様はすでに契約を結んでしまっているため、断りづらい状況に追い込まれがちです。
つまり、最初の高い査定額は「売れる価格」ではなく、あくまで「売主と会うための入場券」として使われていることが多いのです。
からくり③:AI査定の限界点と情報のズレ
近年、多くの査定サイトで導入されているのがAIによる自動査定です。AI査定は、過去の取引事例や公的なデータを基に算出されるため、一見すると客観的で正確に見えます。しかし、これにも限界があります。
- 都市部のマンションには強いが、地方や戸建てには弱い: AI査定は、取引事例が豊富な都市部の規格化されたマンションであれば、比較的正確な数値を弾き出せます。しかし、一つひとつ条件が異なる戸建てや、取引事例そのものが少ない地方の物件については、データが不足しているため精度が著しく低下します。
- 物件の「個性」や「状態」を評価できない: リフォームの有無、日当たりの良さ、眺望、隣地との関係性といった、物件ごとのプラス要素やマイナス要素はAIでは評価できません。例えば、「隣がお化け屋敷のような空き家」といった周辺環境のマイナス要因や、「屋根に雨漏りがある」といった建物のコンディションは、査定額に大きく影響しますが、AIはこれらを全く考慮できないのです。
結果として、AIが弾き出した画一的なデータに、不動産会社の営業戦略(釣り価格)が上乗せされ、実態とはかけ離れた査定額が提示されることになります。
高すぎる査定額を鵜呑みにする3つのリスク
リスク①:売れ残りによる「負のスパイラル」
相場からかけ離れた価格で物件を売りに出すと、当然ながら買い手は見つかりません。長期間インターネット広告などに掲載され続けると、物件は「売れ残り物件」というネガティブなレッテルを貼られてしまいます。
購入検討者は、「何か問題がある物件なのだろうか?」「価格が高いから売れないのでは?」と敬遠するようになり、内覧の申し込みすら入らない状況に陥ります。これが、売却活動における最も避けたい「負のスパイラル」の始まりです。
リスク②:売却活動の長期化と値下げ交渉
売れ残り状態が続くと、不動産会社から値下げを提案されることになります。売却開始から数ヶ月が経過し、焦り始めた売主様は、大幅な値下げに応じざるを得なくなります。
さらに、値下げを繰り返している物件は、買い手から見れば「もっと価格交渉ができる物件」と判断されやすくなります。結果として、足元を見られた厳しい価格交渉の末、当初の相場よりも安い価格で手放すことになってしまうケースも少なくありません。
リスク③:時間と機会の損失
売却活動の長期化は、単に精神的な負担が大きいだけでなく、時間と機会の損失にも繋がります。例えば、「子供の進学に合わせて買い替えたい」「転勤までに売却を終えたい」といった明確な期限がある場合、計画が大きく狂ってしまいます。
また、不動産市場は常に変動しています。運悪く市況が悪化するタイミングと重なってしまえば、本来売れるはずだった価格でさえ売却が難しくなる可能性もあるのです。最初の価格設定の誤りが、売却全体の成否を左右すると言っても過言ではありません。
一括査定サイトを「賢く」利用する3つのポイント
では、一括査定サイトは全く役に立たないのでしょうか?決してそんなことはありません。その「からくり」を理解した上で、目的を明確にして利用すれば、有効なツールになり得ます。ここでは、賢い利用法を3つのポイントに分けて解説します。
ポイント①:「相場の目安」を知るためのツールと割り切る
まず最も大切なのは、一括査定サイトで提示される金額は、あくまで「参考価格」であり「成約価格」ではないと認識することです。複数の会社から提示された査定額の中から、極端に高いものと低いものを除外し、平均的な価格帯を把握しましょう。
「自分がおおよそいくらの資産を持っているのか」という、大まかな相場観を養うための第一歩として活用するのが賢明です。
ポイント②:提示された「査定額の根拠」を必ず確認する
査定額そのものよりも重要なのが、「なぜその金額になったのか?」という根拠です。連絡してきた不動産会社の担当者に、具体的な査定の根拠を詳しく質問しましょう。
- どの取引事例を参考にしたのか?
- 物件のどのような点をプラス(またはマイナス)に評価したのか?
- 今後の市況をどのように予測しているか?
これらの質問に対して、データに基づいた明確な説明ができる会社は、信頼性が高いと言えます。逆に、曖昧な答えしか返ってこなかったり、ただ「高く売れますよ」と繰り返すだけの会社は注意が必要です。
ポイント③:最低でも3社の担当者と直接会って比較する
メールや電話だけで判断せず、必ず複数の会社の担当者と直接面談しましょう。担当者の人柄、知識の豊富さ、提案内容などを比較検討することが重要です。不動産売却は、担当者との二人三脚で進めるプロジェクトです。
あなたの話を親身に聞いてくれ、信頼できると感じるパートナーを見つけることが、成功への近道となります。
失敗しない不動産売却の鍵は「信頼できるパートナー選び」
最終的に、不動産売却が成功するかどうかは、どの不動産会社をパートナーに選ぶかにかかっています。一括査定サイトはあくまで入口の一つであり、そこから信頼できる会社を見つけ出すプロセスが最も重要です。
査定額の「根拠の質」を見極める
前述の通り、単純な査定額の高さに惑わされてはいけません。重要なのは「根拠の質」です。客観的なデータに基づいているか、そしてプロの目で物件の持つ潜在的な価値まで評価してくれているか。この両方の視点から、説得力のある査定報告書を提出してくれる会社を選びましょう。
あなたの状況に合わせた「二刀流」の提案ができるか
売主様の状況は千差万別です。「できるだけ高く売りたい」という方もいれば、「とにかく早く現金化したい」という方もいます。
良い不動産会社は、高く売るための【仲介】と、早く確実に売るための【買取】という二つの選択肢(二刀流)を公平な視点で提示し、それぞれのメリット・デメリットを丁寧に説明してくれます。
自社の利益だけを考え、どちらか一方の選択肢しか提示しない会社ではなく、あなたの状況に最適な方法を一緒に考えてくれる会社こそ、信頼に値します。
ゴールまで伴走してくれる「ナビゲーター」であるか
信頼できるパートナーは、一方的に提案を押し付けるのではなく、まずあなたの「想い」や「ゴール」を深くヒアリングすることから始めます。そして、売却完了まで二人三脚で伴走してくれる「ナビゲーター」のような存在であるべきです。
査定の段階から、あなたの話をどれだけ真摯に聞いてくれるか、という点も重要な判断基準になります。
まとめ|不動産一括査定のからくりを知り、最適なパートナーを見つけよう
今回は、不動産一括査定サイトに潜む「からくり」と、その賢い使い方について解説しました。一括査定サイトは、手軽に相場を知るきっかけとしては有効ですが、提示される高すぎる査定額には注意が必要です。不動産会社の営業戦略やAI査定の限界を理解し、あくまで「参考情報」として捉えることが大切です。
最終的に不動産売却を成功させる鍵は、あなたの状況に深く寄り添い、専門的な知見と客観的なデータを基に、最適な売却戦略を共に描いてくれる信頼できるパートナーを見つけることです。そのためには、査定額の高さだけでなく、その「根拠の質」や、仲介・買取といった複数の選択肢を公平に提示してくれるかどうかを見極める必要があります。
もしあなたが不動産一括査定の結果に疑問を感じていたり、本当に信頼できる相談先を探しているのであれば、まずはMEISA(明紗)の無料「売却ナビ診断」をご利用ください。私たちは、あなたの想いを第一に、二刀流の視点から最適な売却の道をナビゲートすることをお約束します。
本記事が、不動産売却をご検討中の皆様のお役に立てれば幸いです。
- MEISA 明紗は、千葉県流山市を拠点におく不動産会社です。
土地・古屋付土地・収益物件・事業用不動産に特化した売却サポートを行っています。
売却仲介と買取、2つの選択肢をご用意し、売却価格の根拠から市場環境まで、判断に必要な情報を分かりやすくご説明いたします。
市場の最前線で日々、様々な売却ケースに向き合う中で得られた知見を、今後も定期的に発信してまいります。
売却に関する様々なご相談を承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。
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