【完全解説】不動産売買の契約不適合責任とは?売主・買主が知っておくべき重要ポイント

query_builder 2023/03/02
不動産関連知識
契約不適合責任とは? - 不動産売買において売主が負う責任について解説します

不動産取引において、売買契約後に物件の不具合が見つかった場合、どのような対応が必要になるのでしょうか?2020年4月の民法改正により、従来の「瑕疵担保責任」が「契約不適合責任」へと変更されました。

この変更は、単なる名称変更ではなく、売主の責任範囲が大きく拡大し、買主の権利も強化された重要な改正となっています。

なぜ制度が変更されたのか?

従来の瑕疵担保責任では、物件の「隠れた瑕疵」のみが対象でした。しかし、実際の取引では、契約時に合意した内容と異なる状態での引き渡しなど、より広範な問題が発生していました。新しい契約不適合責任は、こうした実態に即して、契約内容との不一致全般に対応できる制度として整備されました。


この改正によって:
・物件の種類、品質、数量に関する契約不適合が対象に
・買主の救済手段が明確化
・売主の責任範囲が明確に定義

契約不適合責任の基礎知識

契約不適合責任とは

契約不適合責任とは、引き渡された不動産が「契約の内容に適合しない」場合に売主が負う責任を指します。民法562条に基づき、物件の種類、品質、数量が契約内容と異なる場合、買主は売主に対して様々な請求をすることができます。

旧制度との重要な違い

以前の瑕疵担保責任と比較すると、以下の点が大きく異なります。


対象となる範囲の拡大
・【旧制度】隠れた瑕疵(目に見えない欠陥)のみが対象
・【新制度】契約内容との不適合全般が対象

判断基準の明確化
・【旧制度】「瑕疵」の解釈が不明確
・【新制度】契約内容との適合性という客観的な基準

具体的な適用例

実際の取引では、以下のような場合に契約不適合責任が問題となります。

品質に関する不適合
・雨漏りがある
・床下や壁に湿気・カビが発生
・構造上の欠陥がある

数量に関する不適合
・契約面積と実測値が異なる
・駐車場の区画数が契約と異なる

種類に関する不適合
・使用されている建材が契約と異なる
・設備の仕様が契約内容と違う

買主の権利と請求できる内容

契約不適合責任のもと、買主には4つの重要な請求権が認められています。これらの権利は、状況に応じて適切に選択・行使することが可能です。

履行の追完請求権

内容
修補(補修工事等)の請求
代替物の引き渡し要求
不足分の引き渡し要求

具体例
雨漏りの修理を要求
契約面積に満たない場合の不足分の土地の引き渡し
契約と異なる設備の交換

※ただし、売主は買主に不相当な負担とならない範囲で、異なる方法での履行追完を提案することができます。

代金減額請求権

内容
・不適合の程度に応じた売買代金の減額を請求
・既に代金を支払い済みの場合は、その一部返還を要求

重要ポイント
・契約不適合の修補にかかる費用
・不適合による物件価値の低下分
・市場価格との比較

損害賠償請求権

請求できる内容
・修補費用相当額

・契約不適合により生じた関連損害
・調査費用
・代替住居費用(居住できない場合)
※売主に帰責事由(過失)がある場合のみ請求可能

契約解除権

行使できる条件
・契約目的を達成できない重大な契約不適合の場合
・相当期間を定めた履行の催告後も追完がない場合

注意点
・軽微な契約不適合では解除できない
・売主に帰責事由がなくても行使可能

権利行使の期限

・不適合を知ってから1年以内に売主に通知する必要あり
・引き渡しから5年を経過すると、原則として権利行使不可
・売主が不適合を知りながら告げなかった場合は、期間制限なし

売主が注意すべきポイント

2

契約不適合責任は売主にとって大きなリスクとなり得ます。ここでは、売主が取るべき具体的な対策について解説します。

責任範囲の明確化

売買契約書での対応
・「現状有姿」での引き渡しを明記
・免責事項の具体的な明示
・瑕疵担保責任の範囲と期間の明確化

ただし、以下の点に注意が必要です:
・責任制限が厳しすぎると売買価格の低下につながる
・故意に告げなかった事実については免責されない
・消費者契約の場合、免責条項が無効となる可能性あり

事前の物件調査

必要な調査項目
・建物状況調査(インスペクション)の実施
・土地の境界確認
・法令上の制限の確認
・設備の動作確認

これにより:
・潜在的な問題の早期発見が可能
・適正な売却価格の設定ができる
・買主との信頼関係構築につながる

告知書の適切な作成

重要なポイント
・知っている不具合は全て記載
・過去の修繕履歴を詳細に記録
・あいまいな表現を避ける
・専門家の調査結果があれば添付

特に注意が必要な項目
・雨漏りの有無と修繕歴
・シロアリ被害の有無
・給排水設備の状態
・近隣との紛争の有無

トラブル防止のための実践的アドバイス

不動産取引におけるトラブルの多くは、事前の準備と適切な対応で防ぐことができます。ここでは、具体的な予防策を解説します。

物件調査の徹底

専門家による調査
インスペクション(建物状況調査)の実施
・建物の構造に関する調査
・設備の状態確認
・雨漏り、結露の有無
・耐震性能の確認
調査のタイミング
・売出し前の実施を推奨
・買主からの要望があった場合は柔軟に対応
・季節特有の不具合も考慮(梅雨時期の雨漏りなど)

売買契約書作成時の注意点

重要な記載事項
・物件の現状に関する詳細な記述
・既知の不具合と修繕履歴
・品質・性能に関する特約事項
・引き渡し後の不具合発見時の対応方法

免責条項の適切な設定
・合理的な範囲での責任制限
・買主の理解を得やすい明確な表現
・法的有効性の確認

専門家への相談タイミング

相談すべき専門家
・宅地建物取引士:取引全般の相談
・弁護士:契約書の確認、トラブル対応
・建築士:建物の技術的評価
・土地家屋調査士:境界確定等

相談のベストタイミング
・売出し前の物件評価時
・重要事項説明書作成時
・契約書締結前
・不具合発見時

まとめ:契約不適合責任への実践的な対応策

契約不適合責任は、不動産取引における重要なリスク要因です。適切な対応により、トラブルを未然に防ぎ、円滑な取引を実現することができます。

チェックリスト

売主向け
□ 建物状況調査(インスペクション)の実施
□ 告知書への正確な情報記載
□ 修繕履歴の文書化
□ 契約書における責任範囲の明確化
□ 適切な価格設定の検討

買主向け
□ 重要事項説明の内容確認
□ 告知書の内容精査
□ 建物状況調査の結果確認
□ 契約不適合時の請求権の理解
□ 引き渡し時の現況確認

専門家への相談窓口

法律相談
・弁護士会の不動産相談窓口
・法テラス(日本司法支援センター)

取引相談
・不動産関連の業界団体
・宅地建物取引士による相談窓口

建物調査
・建築士事務所協会
・インスペクション実施機関

最後に

契約不適合責任は、取引の安全性を高めるための制度です。売主・買主双方が制度を正しく理解し、適切に対応することで、トラブルのない円滑な取引が実現できます。

特に重要なのは、事前の十分な調査と情報開示、そして適切な契約書の作成です。不明な点がある場合は、必ず専門家に相談することをお勧めします。

----------------------------------------------------------------------

MEISA 明紗 - 不動産売却サポート


本記事が、不動産売却をご検討中の皆様のお役に立てれば幸いです。

  • MEISA 明紗は、千葉県流山市を拠点におく不動産会社です。

土地・古屋付土地・収益物件・事業用不動産に特化した売却サポートを行っています。

売却仲介と買取、2つの選択肢をご用意し、売却価格の根拠から市場環境まで、判断に必要な情報を分かりやすくご説明いたします。

市場の最前線で日々、様々な売却ケースに向き合う中で得られた知見を、今後も定期的に発信してまいります。

売却に関する様々なご相談を承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。

----------------------------------------------------------------------

NEW

VIEW MORE

CATEGORY

ARCHIVE

TAG