相続不動産の売却にかかる税金完全ガイド|具体例でわかる計算方法と特例活用術

query_builder 2022/09/07
不動産売却
相続不動産を売却したときの税金 - 土地建物などの相続物件を売るとこれが課税されます

相続した不動産の売却を考えていらっしゃいませんか?


「相続した不動産を売却したいけれど、税金がどのくらいかかるのかわからない...」
「特例や控除があると聞いたけれど、自分のケースに適用できるのだろうか...」
「2024年に法改正があったと聞いたけれど、どう対応すればいいの?」


このような不安や疑問を持たれている方は少なくありません。実際、私が不動産売買の実務で関わってきた多くの方が、同じような悩みを抱えていました。


本記事では、以下の内容について、具体例を交えながらわかりやすく解説していきます。


✔️ 相続不動産を売却する際の税金計算の具体的な方法
✔️ 取得費の正しい考え方と具体的な計算例
✔️ 知っておくべき3つの特別控除と活用方法
✔️ 2024年の法改正への具体的な対応策
✔️ よくある失敗例と対策


この記事を最後まで読むことで、相続不動産の売却にかかる税金について正しい知識を得られ、具体的な対策を立てることができるようになります。
それでは、まず基本的な税金の仕組みから見ていきましょう。


相続不動産売却時の基本的な税金の仕組み

基本の税金体系を理解しよう

相続不動産を売却する際にかかる主な税金は「譲渡所得税」です。これは売却による利益(譲渡益)に対してかかる税金です。


ポイントは、「利益が出た場合のみ課税される」という点です。つまり、売却で損失が生じた場合は、譲渡所得税は課税されません。

具体的な計算方法

譲渡所得の計算式は以下の通りです。

譲渡所得 = 売却価格 - (取得費 + 譲渡費用)


実際の計算例で見てみましょう。
【具体例】
父から相続した土地(被相続人の取得価格1,000万円)を3,000万円で売却する場合
・売却価格:3,000万円
・取得費:1,000万円
・譲渡費用(仲介手数料等):90万円


とすると、
譲渡所得 = 3,000万円 - (1,000万円 + 90万円) = 1,910万円

この譲渡所得に対して税率が適用されることになります。

譲渡費用として認められる主な項目

・不動産仲介手数料
・売買契約書の印紙代
・測量費用
・解体費用(建物を取り壊して土地を売却する場合)
・登記費用

よくある誤解と注意点

実務でよく見かける誤解として、「相続した不動産だから税金はかからない」というものがあります。しかし、相続時の評価額と売却価格の差額に対して譲渡所得税は発生します。


また、「取得費」の考え方も重要なポイントです。相続不動産の場合、被相続人(例:父親)が不動産を取得した際の価格を引き継ぐことになります。この「取得費」の詳細については、次章で詳しく解説していきます。

取得費の正しい理解と計算方法

土地と建物で異なる取得費の考え方

相続不動産の取得費は、被相続人(亡くなられた方)が取得した際の価格を引き継ぎます。ただし、土地と建物では計算方法が異なります。


土地の取得費
土地の場合は、被相続人が購入した際の価格をそのまま取得費として使用できます。


【具体例:土地】
父が1985年に2,000万円で購入した土地を相続した場合
→ 取得費は2,000万円となります
建物の取得費
建物の場合は、取得価格から減価償却費を差し引く必要があります。


【具体例:建物】
父が1995年に3,000万円で建てた建物を2024年に相続した場合

木造建物の耐用年数:22年
経過年数:29年
→ 減価償却後の取得費は実質的に0円となります(耐用年数を超過のため)

取得費が不明な場合の対応策

古い物件や記録が残っていない場合、取得費が不明なことがよくあります。そのような場合は「みなし取得費」を使用できます。


みなし取得費の計算方法

みなし取得費 = 売却価格 × 5%


【具体例:みなし取得費】
売却価格4,000万円の物件で取得費が不明な場合
みなし取得費 = 4,000万円 × 5% = 200万円


みなし取得費のメリット・デメリット
メリット
・計算が簡単
・過去の資料が不要
・税務調査のリスクが少ない
デメリット
・実際の取得費よりも低額になることが多い
・譲渡所得が大きく計算される可能性が高い
・結果として税負担が増える可能性がある

実務上のアドバイス

20年の実務経験から、以下のようなケースでみなし取得費の使用をお勧めします。


1.取得時期が非常に古く、資料が全く残っていない場合
2.建物が耐用年数を大幅に超過している場合
3.実際の取得費が売却価格の5%未満と推測される場合

一方で、以下のような場合は可能な限り実際の取得費を調べることをお勧めします。

1.比較的最近(20年以内)に取得した物件
2.高額な物件(特に土地)
3.大規模な改修や設備投資を行っている場合

取得費の算出は売却における税金計算の要となります。次章では、この取得費を基に計算される譲渡所得に対する税率について、詳しく見ていきましょう。

知って得する税率の違いと所有期間の考え方

所有期間で大きく変わる税率

譲渡所得に対する税率は、所有期間によって大きく異なります。これは売却のタイミングを考える上で重要なポイントとなります。


税率の違い
・所有期間5年以下(短期):39.63%(所得税30.63% + 住民税9%)
・所有期間5年超(長期):20.315%(所得税15.315% + 住民税5%)

相続不動産における所有期間の考え方

相続不動産の場合、所有期間は以下のように計算します。


所有期間 = 被相続人の取得日から売却日までの期間


【具体例】
父が1990年に購入し、2023年に相続、2024年に売却する場合
→ 所有期間 = 1990年から2024年まで(34年)
したがって、長期譲渡所得として20.315%の税率が適用されます。

税率の違いによる具体的な税額の差

実際の数字で税率の違いによる影響を見てみましょう。


【具体例:税額計算】
譲渡所得2,000万円の物件を売却する場合
▼短期譲渡所得の場合(39.63%)
・税額 = 2,000万円 × 39.63% = 792.6万円

▼長期譲渡所得の場合(20.315%)
・税額 = 2,000万円 × 20.315% = 406.3万円

差額:386.3万円


このように、所有期間による税率の違いは税額に大きな影響を与えます。

実務上の重要ポイント

1. 所有期間の証明について
・登記簿謄本や売買契約書など、取得日を証明できる書類の保管が重要
・特に古い物件は書類の紛失に注意

2. 相続までの経緯の確認
・贈与を受けた後に相続となった場合、贈与時まで所有期間が遡る
・複数回の相続を経ている場合は、最初の取得者までさかのぼる

3. よくある失敗例
・自分が相続してからの期間だけを計算してしまう
・建物の建築時期と土地の取得時期を混同する
・登記日と売買契約日を間違える

節税のための実践的アドバイス

1.短期売却を検討している場合、可能であれば5年超まで待つことを検討
2.複数の不動産を相続している場合、売却順序を所有期間から検討
3.相続直後の売却では、次章で解説する「相続税の取得費加算の特例」の活用を検討

次章では、さらなる節税の可能性を広げる「特別控除と特例」について詳しく解説していきます。

相続空き家の3,000万円特別控除を活用する

相続空き家の3,000万円特別控除とは

相続した空き家の売却時に使える、最大3,000万円の譲渡所得控除制度です。2024年現在、この特例は2027年12月末まで利用可能です。

適用条件を確認しよう

この特例を使うためには、以下の条件をすべて満たす必要があります。

1.相続開始から3年以内の売却であること
2.昭和56年5月31日(1981年)以前に建築された建物であること
・耐震基準に適合している必要あり
・耐震診断を受けて証明を取得
3.被相続人が亡くなる前に一人で住んでいた家であること
4.相続開始から売却までの間、誰も住んでいないこと
・賃貸などで使用していないこと
・相続人が居住していないこと

具体的な節税効果を見てみよう

【具体例】
相続した空き家(土地・建物)を5,000万円で売却するケース


▼特例を使用しない場合
・譲渡所得5,000万円に対する税額
・5,000万円 × 20.315% = 1,015.75万円の税金

▼特例を使用した場合
・控除後の譲渡所得:5,000万円 - 3,000万円 = 2,000万円
・2,000万円 × 20.315% = 406.3万円の税金

節税効果:609.45万円

実務でよくある失敗と対策

耐震診断を忘れるケース
・必ず売却前に耐震診断を実施
・基準を満たさない場合は耐震改修工事を検討

期限切れで特例を逃すケース
・相続開始日から売却までのスケジュール管理が重要
・相続開始から3年以内の売却が必須

相続後に誰かが住んでしまうケース
・相続後は空き家のまま維持
・管理は可能だが、居住や賃貸は不可

特例活用のための実践的アドバイス

すぐにやるべきこと
・建築時期の確認(登記簿で確認可能)
・耐震診断の予約
・売却スケジュールの作成

売却までの注意点
・定期的な空き家の管理は必要
・売却活動中も居住や賃貸は避ける
・必要書類の事前準備を怠らない

必要書類チェックリスト
・被相続人の住民票除票
・耐震診断結果の証明書

・相続人全員の印鑑証明書
・その他物件関係書類

2024年の注意点と実務上の対策

2024年からの相続登記義務化に対応する

2024年4月から相続登記が義務化され、相続開始を知った日から3年以内に登記申請をする必要があります。空き家の売却を検討されている方は、以下の手順で対応しましょう。


必要な対応手順
1.相続登記の準備
・法務局で登記事項証明書を取得
・相続人全員の戸籍謄本を収集
・遺産分割協議書の作成(複数相続人の場合)

2.建物状況の確認
・耐震診断の実施
・必要に応じて耐震改修工事の検討
・空き家の状態維持の確認

売却までの具体的なスケジュール管理

3年以内売却のタイムライン

相続開始

2週間以内:相続人の確定と連絡

1ヶ月以内:相続登記の準備開始

3ヶ月以内:耐震診断の実施

6ヶ月以内:必要に応じて耐震改修

1年以内:売却活動の開始

3年以内:売却完了

よくある失敗例と対策

1. 期限管理の失敗
・相続開始日を起点としたスケジュール表の作成
・重要な期限は携帯にアラート設定
・税理士・不動産会社との定期的な進捗確認

2. 必要書類の準備不足
・戸籍謄本の収集漏れ
・耐震診断証明書の未取得
・相続人の印鑑証明書の有効期限切れ

3. 条件確認の不備
・建築時期の確認ミス
・被相続人の居住実態の証明不足
・相続後の空き家状態の証明不足

実務担当者による最終チェックリスト

□ 相続開始日の確認
□ 相続人全員の同意確認
□ 建築時期の確認(昭和56年5月31日以前)
□ 耐震診断の実施と証明書取得
□ 被相続人の単独居住の証明
□ 相続後の空き家状態の維持確認
□ 相続登記の完了
□ 売買契約前の特例適用要件の最終確認

専門家への相談タイミング

相続発生直後
・税理士への相談(特例適用の可能性確認)
・不動産会社への相談(物件価値の査定)

売却活動開始前
・税理士との特例適用の最終確認
・不動産会社との売却戦略の策定

売買契約締結前
・特例適用要件の最終確認
・必要書類の完備確認

まとめ:相続空き家の売却特例を確実に活用するために

まとめ

重要ポイントの整理

相続空き家の3,000万円特別控除は、条件さえ満たせば最大609万円もの節税が可能な非常に有効な特例です。

ただし、適用には以下の点に特に注意が必要です。


✔️ 相続開始から3年以内の売却であること
✔️ 1981年5月31日以前の建物は耐震診断が必須
✔️ 相続から売却までの空き家状態の維持が重要
✔️ 2027年12月末までの期間限定制度

具体的なアクションプラン

明日からできる準備として、以下の手順で進めることをお勧めします。

1.まずは建物の建築時期を確認
・登記事項証明書で確認可能
・昭和56年5月31日が基準日

2.耐震診断の手配
・建築士事務所への相談
・費用と所要時間の確認

3.相続登記の準備
・必要書類のリストアップ
・相続人全員の連絡先確認

最後に

相続空き家の売却は、特例の活用で大きな節税が可能です。一方で、期限や条件の管理が重要なため、不動産の専門家や税理士への早めの相談をお勧めします。

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