不動産相続税評価額の計算方法完全ガイド|土地・建物別の具体例で解説

query_builder 2022/12/29
不動産相続
不動産相続税の評価額 - どのように計算されるのかを解説します

不動産を相続することになった方の多くが、まず戸惑うのが「相続税評価額」という考え方です。実際の売却価格(時価)とは異なる金額が使われることに疑問を感じる方も少なくありません。


この記事では、不動産の相続税評価額について、以下のポイントを詳しく解説していきます。
・相続税評価額とは何か、なぜ必要なのか
・建物の相続税評価額の具体的な計算方法
・土地の相続税評価額の計算手順と注意点
・相続税評価額を適切に抑えるための対策

不動産取引経験から得た知見をもとに、具体例を交えながら、わかりやすく説明していきます。
この記事を読むことで、不動産の相続税評価額の仕組みを理解し、適切な相続対策を検討するための基礎知識が身につきます。


不動産相続税評価額の基礎知識

相続税評価額とは何か

相続税評価額は、相続税を計算するために国が定めた基準に基づいて算出される金額です。


ポイントは以下の3つです:
・実際の売買価格(時価)とは異なる金額になります
・一般的に時価よりも低く設定されています
・土地と建物は別々に計算する必要があります

なぜ時価と違うのか

「なぜ実際の売却価格ではなく、別の基準で計算するのか?」これは多くの方が抱く疑問です。


その理由は主に2つあります。
公平性の確保
不動産の実際の売却価格は、売り手と買い手の交渉で決まります。相続税の計算にこれを使うと、取引ごとに大きな差が出てしまい、公平な課税が難しくなります。


納税者の負担への配慮
相続税評価額は一般的に時価の約8割程度に設定されています。これは、相続人の納税負担を考慮した措置といえます。

よくある誤解と真実

不動産の相続税評価額について、よくある誤解をいくつか解説します。


❌ 誤解1:固定資産税評価額と相続税評価額は同じ
→ 建物は同じですが、土地は異なる計算方法が使われます。


❌ 誤解2:相続税評価額は不動産会社に査定してもらえる
→ 相続税評価額は国の定めた基準で計算するため、不動産会社の査定額とは異なります。


❌ 誤解3:マンションも戸建ても計算方法は同じ
→ 建物の種類や使用目的によって、計算方法が変わってきます。

建物の相続税評価額を計算しよう

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建物の相続税評価額は、その使用目的によって計算方法が異なります。

ここでは主な2つのケース、「自宅として使用している建物」と「賃貸用の建物」について解説します。

自宅用建物の計算方法

自宅として使用している建物の場合、計算方法はシンプルです。


自宅の相続税評価額 = 固定資産税評価額
固定資産税評価額は以下のいずれかの方法で確認できます。

・固定資産税納税通知書で確認
・市区町村役所で固定資産税評価証明書を取得

【具体例】
築15年の木造2階建て一戸建て(自宅)
・固定資産税評価額:1,000万円 → 相続税評価額も1,000万円

賃貸用建物の計算方法

賃貸用建物(アパートやマンションなど)の場合は、以下の計算式を使います。


賃貸建物の相続税評価額 = 固定資産税評価額 −(固定資産税評価額 × 借家権割合30% × 賃貸割合)
賃貸割合は、建物全体の床面積に対する賃貸部分の床面積の割合です。


【具体例】
築10年の賃貸アパート
・固定資産税評価額:2,000万円
・賃貸割合:100%(建物全体を賃貸に使用)
 → 相続税評価額の計算:
 2,000万円 −(2,000万円 × 30% × 100%)= 1,400万円

計算時の注意点

建物の経年減価
・建物は年数が経つにつれて評価額が下がります
・木造建物は特に減価償却が早く進みます

居住用と賃貸用の併用の場合
・賃貸部分と居住部分を分けて計算する必要があります
・それぞれの床面積の割合に応じて計算します

固定資産税評価額の確認時期
・相続時点に最も近い固定資産税評価額を使用します
・年の途中で相続が発生した場合は、その年の評価額を使います

土地の相続税評価額を計算しよう

土地の相続税評価額は、利用状況や地域によって計算方法が変わってきます。ケース別に詳しく解説します。

更地・自宅用地の計算方法

更地や自宅用地の相続税評価額は、路線価を基準に計算します。


基本的な計算式:
土地の相続税評価額 = 路線価 × 土地面積 × 各種補正率


【具体例】
東京都内の自宅用地
・路線価:40万円/㎡
・土地面積:100㎡
・補正率:1.0(整形地で補正不要の場合)
→ 相続税評価額:40万円 × 100㎡ × 1.0 = 4,000万円

路線価の見方

路線価は国税庁のウェブサイトで確認できます。


注意点は以下の通りです:
確認すべき情報
・該当する道路の路線価
・土地が面する道路の数
・公示価格との比較(路線価は公示価格の約8割)

よくある間違い
・前面道路が複数ある場合の計算ミス
・路線価がない道路に接する場合の評価方法の誤り

各種補正率について

土地の評価額は、以下のような要因で補正が必要になることがあります。

・土地の形状(不整形地、旗竿地など)
・奥行きの長短
・面積の大小
・道路との高低差
・都市計画による制限

賃貸用土地(借地権が設定されている土地)の計算方法

賃貸用建物の敷地など、借地権が設定されている土地は以下の計算式で評価します。


賃貸用土地の相続税評価額 = 更地としての評価額 −(更地評価額 × 借地権割合 × 借家権割合30% × 賃貸割合)


【具体例】
賃貸マンションの敷地
・更地評価額:5,000万円
・借地権割合:70%(地域による)
・賃貸割合:100% 

 → 相続税評価額:
 5,000万円 −(5,000万円 × 70% × 30% × 100%)= 3,950万円

相続税評価額を適正に抑える方法

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相続税の負担を軽減するためには、法律の範囲内で適切な対策を講じることが重要です。

建物に関する対策

賃貸活用による評価額の低減
・建物を賃貸することで借家権割合が適用され、評価額を下げることが可能
・ただし、賃貸経営のリスクも考慮する必要あり

減価償却の活用
・建物の経年による評価額の低下を計画的に活用
・特に木造建物は比較的早く評価額が下がる

土地に関する対策

小規模宅地等の特例の活用
最も効果的な対策の一つです。条件を満たせば評価額を最大80%減額できます。
主な適用条件:
・被相続人の自宅や事業用地であること
・相続人が一定期間居住や事業を継続すること
・面積制限内であること(居住用は330㎡まで)

土地の有効活用
・土地の一部を貸駐車場として活用
・アパートやマンションを建設して賃貸化
※ただし、収益性とコストを十分検討する必要あります

専門家に相談するべきタイミング

以下のような場合は、早めの専門家相談をお勧めします:

相続税の発生が予想される場合
・不動産の評価額が高額
・相続人が複数いる
・事業用資産がある

特例の適用を検討する場合
・小規模宅地等の特例の活用
・相続時精算課税制度の検討
・生前贈与の活用

注意すべきポイント

対策は計画的に
・相続が発生してからでは間に合わない対策も多い
・5年〜10年前から準備することをお勧め

家族との合意形成
・相続対策は家族の理解と協力が不可欠
・事前に家族で話し合いを持つことが重要

定期的な見直し
・税制改正への対応
・不動産市況の変化への対応
・家族状況の変化への対応

まとめ:不動産相続税評価額の重要ポイント

まとめ

不動産の相続税評価額について、重要なポイントを整理しましょう。

基本的な考え方を押さえよう

・相続税評価額は実際の売却価格(時価)とは異なります
・土地と建物は別々に計算する必要があります
・利用状況(自宅用・賃貸用)によって計算方法が変わります

具体的な計算方法を確認しよう

建物の場合
・自宅用は固定資産税評価額がそのまま相続税評価額に
・賃貸用は借家権割合による減額が可能

土地の場合
・路線価を基準に計算
・土地の形状や利用状況による補正が必要
・賃貸用は借地権割合による減額が可能

対策のポイント

・早めの準備が重要(5年〜10年前から)
・小規模宅地等の特例などの活用を検討
・定期的な見直しと家族との合意形成が必要


不動産の相続税評価額は複雑で、一度の読み込みですべてを理解するのは難しいかもしれません。この記事を参考に、ご自身の状況に応じて必要な対策を検討し、適切なタイミングで専門家に相談することをお勧めします。
そうすることで、相続に向けた準備を計画的に進め、ご家族の将来に向けて適切な対策を講じることができます。


最後に、相続税制は改正されることも多いため、定期的な情報収集を心がけましょう

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MEISA 明紗 - 不動産売却サポート

本記事が、不動産売却をご検討中の皆様のお役に立てれば幸いです。

MEISA 明紗は、千葉県流山市を拠点におく不動産会社です。

土地・古屋付土地・収益物件・事業用不動産に特化した売却サポートを行っています。

売却仲介と買取、2つの選択肢をご用意し、売却価格の根拠から市場環境まで、判断に必要な情報を分かりやすくご説明いたします。

市場の最前線で日々、様々な売却ケースに向き合う中で得られた知見を、今後も定期的に発信してまいります。

売却に関する様々なご相談を承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。

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