相続した実家の登記簿に、昔の抵当権が残っていたら──貸した会社がもう無くても、消す道はある

query_builder 2026/10/22
不動産売却不動産相続
和室の座卓に置かれた、古い書類箱と封筒

相続登記の準備で、実家の登記簿を取り寄せた。持ち主の欄には、亡くなった父の名前。その下の「乙区」に、昭和の日付と、聞いたことのない会社名の抵当権が残っている。父は、とうの昔にローンを返し終えていたはずなのに・・・

古い住宅ローンの抵当権は、返し終わっていても、抹消の登記をしなければ登記簿に残ります。家を売るなら、引き渡すまでに消すのが前提です。貸した会社がもう無くても、消す道はあります。この記事では、相続した実家の登記簿に古い抵当権が見つかったときに、相手の会社の状態で分かれる4つの道と、売り出す前に組んでおきたい順番を整理します。

返し終わっていたはずのローンが、なぜ残っているのですか?

抵当権とは、お金を貸した側が、返してもらえなかったときに家と土地から回収できるようにしておく権利です。住宅ローンを組むと、銀行などの金融機関が抵当権を設定し、登記簿の「乙区」(=所有権以外の権利を記録する欄)に載ります。

ローンを全額返せば、抵当権は実質的に役目を終えます。けれど、登記簿の記録はひとりでには消えません。抹消の登記を申請しなければ、登記の上では抵当権が残ったままになります(法務局の案内)。返し終えたときに金融機関から抹消の書類が届いても、申請までされないまま、書類ごと何十年も眠っていることがあります。

団体信用生命保険(=ローンを借りた人が亡くなったときに、保険で残りが返済される仕組み)で返済が済んだ場合も、登記の抹消は別の手続きです。返済が終わったことと、登記簿から消えたことは、同じではありません。

見つかるきっかけは、相続登記の準備で登記簿を取ったときかもしれません。手続きを任せきりにしていると、売り出す段になって、査定の席で担当者に指摘されて初めて気づくこともあります。

残っていたのは、登記の手続きの忘れものです。親御さんが何かを残していったことを意味するものではありません。親が元気なうちに確かめておきたい権利関係は、実家の権利関係の生前確認で整理しています。

抵当権が残ったままでも、売れますか?

結論:売りに出すことはできますが、引き渡すまでに抹消するのが前提です。抹消は持ち主と抵当権を持つ側が一緒に申請するのが原則のため(不動産登記法60条)、相手がいまどうなっているかで、かかる手間が変わります。

抵当権が残ったまま引き渡すと、買主は抵当権の付いた家と土地を買うことになります。住宅ローンを使う買主の場合、金融機関は自分の抵当権を設定して融資するため、前の抵当権が残った家が受け入れられることはありません。融資を使わない場合も然り。そのため売買では、決済の日までに抵当権を消すことを、売主の義務として契約書に盛り込みます。

登記簿に残った抵当権は、売るときに買主へ説明される事項でもあります。不動産会社は、契約の前に、登記された権利の種類と内容を、宅地建物取引士から買主に説明しなければなりません(宅地建物取引業法35条)。隠したまま売ることはできない、ということです。隠せるものでもありませんが、、、

抹消の登記は、持ち主(登記権利者)と抵当権を持つ側(登記義務者)が一緒に申請するのが原則です(不動産登記法60条)。相手が健在なら、抹消に必要な書類をそろえ、司法書士に申請を頼めば進みます。話が止まるのは、相手が見つからないときです。

ローンがまだ残っている家を売るときは、売却決済の場で残りを返して抵当権を消します。その段取りは住宅ローンが残る家の売却で整理しています。この記事は、返し終わっているのに登記だけが残っている場合の話です。

消す道は、相手の会社がいまどうなっているかで、どう分かれますか?

相手の状態で、道は4つに分かれます

登記簿に残った古い抵当権を消す道を、抵当権を持つ会社が健在か、合併で引き継がれたか、解散・破産で清算人や破産管財人がいるか、見つからないかの4つに分け、それぞれの道と頼む先、売り出す前の順番を示した分岐図

結論:抵当権を持つ会社が①健在か ②合併などで別の会社に引き継がれているか ③解散・破産していても清算人や破産管財人がいるか ④探しても見つからないか、で道が分かれます。④でも、要件を満たせば持ち主だけで抹消を申請できる道があります(不動産登記法70条・70条の2)。

①相手の会社が健在なら

いちばん手間の少ない道です。相手の会社と話をして、抹消に必要な書類をそろえ、通常の抹消と同じように申請します。被相続人の書類箱に、返し終えたときに届いた書類が残っていることもあります。

②合併などで、別の会社に引き継がれているなら

昭和の金融機関には、合併や再編で名前が変わった会社もあります。合併で消えた会社の権利と義務は、合併後に残った会社などが引き継ぎます(会社法750条ほか)。引き継いだ会社がわかれば、そこが話す相手になり、①と同じ道に戻ります。

③解散・破産していても、清算人や破産管財人がいるなら

会社が解散・破産していても、後始末を受け持つ清算人や破産管財人(=会社の財産を整理する役目の人。弁護士が務めていることもあります)が、話す相手として残っていることがあります。法務省の通達でも、解散した会社の清算人・破産管財人を調べる手順が定められています(法務省民事局長通達 令和5年3月28日)。相手を探し当てるのは、司法書士や弁護士の仕事です。

④探しても、相手が見つからないなら

相手が見つからなくても、持ち主だけで抹消を申請できる道が、法律に用意されています。どれに当たるかは、抵当権の内容と、相手の会社の状態で決まります。

  • 裁判所の手続きを経る道:相手の所在が知れないときは、裁判所に公示催告を申し立て、除権決定(=裁判所が権利を失わせる決定)を得て、持ち主だけで抹消を申請できます(不動産登記法70条)。
  • 弁済期から20年を過ぎた古い抵当権:相手の行方が知れず、ローンの返済期限(弁済期)から20年以上が過ぎている場合の道です。元本・利息・損害金の全額を供託(=法務局にお金を預けること)して、持ち主だけで抹消を申請できます(不動産登記法70条/法務省「供託Q&A」)。一般に「休眠担保権」の抹消と呼ばれる道です。
  • 解散した会社の、30年を過ぎた抵当権:相手の会社が解散していて、決められた方法で調べても清算人が見つからない。そのうえで、弁済期から30年、かつ会社の解散の日から30年が過ぎていれば、持ち主だけで抹消を申請できます(不動産登記法70条の2)。令和5年4月1日から使えるようになった道です。

3つ目の道でそろえるのは、返済期限がわかる書類(借りたときの金銭消費貸借契約証書など)と、会社が解散した日がわかる書類です。あわせて、調べても清算人が見つからなかったことを示す調査の記録を付けます(法務省民事局長通達 令和5年3月28日)。清算人が亡くなっていることがわかった場合も、「見つからない」に当たるとされています(同)。

どの道に当たるかは、登記簿と、相手の会社の登記などを調べてはじめてわかります。道によって、かかる手間はまるで違います。だからこそ、売り出す前に確かめておきたいのです。

売り出す前に、何をどの順番で進めますか?

結論:①登記簿を取って乙区を見る ②残っていたら、相手の会社の状態を司法書士に調べてもらう ③消せる見込みと道筋が見えてから、売り出しの時期と決済の日を決める、の順です。相続登記がまだなら、抹消とあわせて司法書士に頼めます。

1つ目は、登記簿を取ることです。法務局で登記事項証明書を取り、甲区(=持ち主の欄)と乙区を見ます。乙区に抵当権が載っていて、抹消の記録が無ければ、残っているということです。

抹消を申請するのは、持ち主です。相続した実家なら、相続登記と抵当権の抹消を、同じ司法書士にまとめて頼めます。登記簿の住所や氏名がいまと違えば、その変更の登記が要ることもあります。相続登記と登記の食い違いの全体は、登記義務化と実家の売却で整理しています。

2つ目は、相手の状態を調べてもらうことです。あわせて、被相続人の書類箱を探してみてください。借りたときの契約書、返済の明細、金融機関から届いた封筒。返済期限がわかる書類は、どの道でも手がかりになります。

3つ目が、売り出しの時期と決済の日です。抹消の見込みが立つ前に決済の日を約束すると、その日に間に合わないおそれがあります。間に合わなかったときに契約を白紙に戻す取り決めを、特約として盛り込む方法もあります。ただ、まずは見込みを立ててから約束するのが、売主さんにも買主さんにも負担の少ない順番です。

時間がかかりそうなとき、仲介と買取はどう比べますか?

結論:引き渡すまでに抹消するのが前提なのは、仲介でも買取でも同じです。違うのは、決済の日を抹消の見込みに合わせて組めるかどうかです。見込みが早く立つなら、仲介のほうが手取りは多くなる可能性があります。

仲介で個人の買主さんに売る場合、買主さんには引越しや住宅ローンの審査の予定があり、決済の日を後ろへずらしにくいことが多くあります。抹消の見込みがはっきりしていれば、仲介でも問題なく進められます。

買取では、不動産会社が買主になります。抹消してから引き渡すのは同じですが、決済の日を抹消の見込みに合わせて組める会社もあります。抹消にどれだけかかるか読めないときは、この段取りの柔らかさが効くこともあります。

明紗は、仲介のお手伝いもしますが、買取では買主として直接買い取る会社です。買取価格は、その後の手入れや保有にかかる費用とリスクを買主が引き受ける前提で決まるため、仲介で売る想定を下回りやすくなります。次のような場合は、仲介のほうが手取りは多くなる可能性があります。

  • 相手の会社が健在か引き継ぎ先がわかり、抹消の見込みが早く立つ
  • 売り出しまでの時間に余裕がある
  • 家と土地に、一般の買主さんが付きやすい

反対に、抹消にどれだけかかるか読めない、決済の日を先に決めにくい事情がある。そうした場合は、現況のままの買取が合うこともあります。両方の比べ方は、買取と仲介、どちらで売る?で整理しています。

不動産取引の現場から

明紗では、相続した実家のご相談を伺うと、査定の前に登記簿を取り、甲区と乙区を確かめます。乙区に古い抵当権が残っていたら、価格の話より先に、相手の会社がいまどうなっているかを調べる段取りを組みます。

司法書士に相手を当たってもらい、消せる見込みと道筋が見えてから、売り出しの時期と決済の日を決めます。見込みが立つ前に、決済の日を約束しません。

親御さんが長い年月をかけて返し終えた家です。私は、きれいな登記簿にして、次の持ち主へ手渡したいと考えています。

登記簿に古い抵当権が見つかった段階でも、売却のご相談をお受けしています。

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代表メッセージもあわせてご覧いただけます。

古い抵当権と実家の売却、よくあるご質問

Q. 昔の抵当権が残ったままでも、家を売り出せますか?

売りに出すことはできます。ただし、引き渡すまでに抹消するのが前提で、売買契約では決済の日までに抵当権を消すことを売主の義務として盛り込みます。抹消の見込みが立ってから決済の日を決めると、期日に追われずに済みます。

Q. 抵当権を持っていた会社がもう無い場合、抵当権も消えているのではありませんか?

会社が無くなっても、登記簿の抵当権はひとりでには消えません。合併で引き継いだ会社や、清算人・破産管財人が相手として残っていることがあります。探しても見つからない場合は、要件を満たせば持ち主だけで抹消を申請できる道があります(不動産登記法70条・70条の2)。

Q. 休眠担保権とは何ですか?

返済期限から長い年月が過ぎ、抵当権を持つ側と連絡がとれなくなった担保権を、一般にこう呼びます。相手の行方が知れず、弁済期から20年以上過ぎていれば、元本・利息・損害金の全額を供託して、持ち主だけで抹消を申請できます(不動産登記法70条/法務省「供託Q&A」)。

Q. 抵当権の抹消は、自分で申請できますか?

相手が健在で書類がそろっていれば、持ち主が自分で申請することもできます(法務局の案内)。相手が見つからない場合は、調査や裁判所の手続き、供託が絡むため、司法書士に相談するのが現実的です。

Q. 他社で「抵当権が消せないと扱えない」と言われました。もう売れないのでしょうか?

消す道が無いのか、まだ調べていないだけなのかを、まず分けて考えてください。相手の状態を調べれば、道筋が見えることがあります。他社で断られた家の売り方は訳あり物件の買取で整理しています。相続した実家の処分の全体は相続した実家の売却をご覧ください。

まとめ──売り出す前に登記簿を取り、順番を組む

まとめ

古い住宅ローンの抵当権は、返し終わっていても、抹消の登記をしなければ登記簿に残ります。家を売るなら、引き渡すまでに消すのが前提です。

消す道は、相手の会社が健在か、引き継がれているか、清算人や破産管財人がいるか、見つからないかで分かれます。見つからなくても、要件を満たせば持ち主だけで抹消を申請できる道があります。

売り出す前に登記簿を取り、残っていたら司法書士に相手を当たってもらい、見込みが立ってから決済の日を決める。この順番を守れば、古い抵当権は売却を止める壁ではなく、片付けてから進む一つの段取りになります。

登記簿を取ったところで止まっていても、そこからご一緒できます。ご相談は無料です。

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本記事に関するご注意

  • 本記事の内容は、執筆時点(2026年10月)の法令と、法務省・法務局の公表情報に基づいています。最新の情報は各機関の公式サイトでご確認ください。
  • 抵当権の抹消の可否と方法は、登記の内容と相手の状態によって決まります。本記事は抹消や売却の結果をお約束するものではありません。登記の手続きは司法書士、相手の調査や裁判所の手続きは司法書士・弁護士へのご相談をお勧めします。
  • 明紗は買取において買主として直接買い取る立場であり、仲介の査定とは利害構造が異なります。仲介のほうが手取りが多くなるケースもあり、その場合は正直にお伝えしています。

抹消に時間がかかりそうで決済の日を決めにくい場合は、現況のままの買取もご相談いただけます(相続した実家・古家の買取)。

宅地建物取引業 千葉県知事第17957号
合同会社明紗

この記事を書いた人

中山裕章/合同会社明紗 代表

宅地建物取引士。流山市・柏市・松戸市・市川市の売却と買取を一貫して担当しています。他社で断られた物件こそ、まずはMEISAに——を約束に、相続した実家の登記簿の確認から、売り出しの段取り、引渡しまでご一緒しています。査定根拠100%開示・最短15営業日決済。流山の相場感を大切に、一軒に一つの物語を。/代表メッセージ

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メールmeta-meisa@memoad.jp
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